【東フィル定期】幻想
先日、東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会に行ってきた。指揮はチョン・ミョンフン。幻想交響曲をメインに据えたプログラムだった。
幻想は小学生の頃に母に教えられて好きになったと記憶している。
恋煩いをし、アヘン中毒で見た夢というストーリーがあるお陰で小学生でも楽しむことが出来た。その頃トロンボーンを吹いていたこともあって、トロンボーンが活躍する4,5楽章を特に好んで聴いていた。
高校受験の合格発表を見に行く際は、あまりの緊張に4楽章の「断頭台への行進」が脳内再生すると母に訴えていた。そういうイタい中学生だった。
この人生の大半を幻想と過ごしてきたわけだが、最近は全然聴いていなかった。マイベスト盤が定まっていないのと、ワーグナーやマーラーの長大な作品ばかり聴いているせい。
今回、東フィルの定期を聞きに行くにあたって再び聞き返したところ、キャッチーな旋律がとても耳触り良い。やはり私は幻想が好きらしい。
幻想を聴いているうちに、ワーグナー作品との類似点を発見した。
ワーグナーがベルリオーズの影響を受けたという話は聞いたことが無いが、何らかの形で影響を受けたのかもしれないし、西欧作曲家にとってこの表現方法は基本的なことなのかもしれない。
1.イデー・フィクスとライト・モティーフ
幻想では1楽章から最終楽章まで通して「恋人の主題*1」が提示される。恋人を想う高揚感と絶望感が表現されている。
この主題は、idee fixeと呼ばれる固定観念・強迫観念の表現方法であり、ワーグナーがたくさん用いるライト・モティーフの先駆である。
幻想においては、登場人物の精神状態だけを表現されたが、ワーグナーになると気持ち、ヒト・モノ・コトすべてが表現されるようになる。
時代も国も違うのにも関わらず関連性がみられ面白い。
2.羊飼いの笛
幻想3楽章「田舎の情景」でコールアングレが羊飼いの笛の役割を果たす。これはワーグナー作品(タンホイザー)でも見られる。
羊飼いの笛がどんな音色なのか分かりかねるが、フランスでもドイツでもアングレが最も類似した音色だという認識なんだろう。羊飼いの笛、聴いてみたい。
今のところ以上2点が類似点。類似点を見つけると点が線になり、線が図形となるような快感を得られる。もっと見つけたい。
*1:この主題に関しては、バーンスタインの解説が詳しい